利尻山


利尻山は円錐形の特徴をもつ成層火山で、2000年以上前に起きた噴火を最後にその活動を休止している。数千年もの活動休止と厳しい気象環境により、山頂部は浸食と崩壊が進み、火口などの顕著な火山地形は失われ急峻な岩壁や荒々しい岩稜帯の様相を呈している。「リシリ」(リイ・シリ)とはアイヌ語で「高い山のある島」という意味で、その高い山は利尻山を指し、島内からだけではなく隣島の礼文島や北海道北部の日本海沿岸からも望むことができる。昔から海上、地上交通の目印になってきただけでなく、この土地のシンボルとして「利尻富士」の愛称で親しまれている。高山植物も豊富で、その地理的、気候的環境からリシリヒナゲシやリシリゲンゲなどの固有種も見られる。また離島であるため大型哺乳類(ヒグマなど)や爬虫類(ヘビ)はいない。山頂からの眺望は島の全景をはじめ、礼文島・サロベツ原野・サハリンにまで及ぶ。山麓の2つの登山基地、鴛泊と沓形には天然温泉が湧いていて登山客や観光客の憩の場となっている。

「日本百名山」より

深田氏は礼文島からこの山を眺めている。夕陽に照らされた鋭い岩峰が印象的であったようだ。氏はこの山を「利尻岳」と呼んでいる。国土地理院では「利尻山」(りしりざん)という名称をつけていて、現地でも「利尻山」や「利尻富士」と呼ぶのが通常のようである。山の名前や歴史の解釈にこだわりをもつ氏がなぜ「利尻岳」と呼んだのかは不明である。海洋に聳えるその姿や山頂部付近の険しい岩稜からあえて「岳」と呼んだのではないかと推測される。
氏は沓形の街から8時間かけて利尻山に登った。山頂部は常に曇っていて絶えず強風が吹いていたため、安全な鴛泊への道を下った。雲の切れ目に垣間見た山頂付近の岩稜帯、特にローソク岩が印象的であったようだ。稚内への帰途、船上から遠ざかる利尻島を見て「利尻島はそのまま利尻岳であった」と述べている。深田氏の言うところの直裁素朴な感想で共感をもてる言葉である。





利尻島へのアプローチは札幌から飛行機を利用したり、東京から稚内まで飛んでフェリーに乗り継ぐなどの方法が考えられる。ここではコスト面を重視し、札幌から稚内まで都市間特急バスの特急わっかない号・はまなす号を利用し、稚内からはフェリーを乗り継ぐことをおすすめする。道内や利尻島での移動はレンタカーやタクシーを利用せず、鉄道やバスの利用で不自由はない。なお札幌ー稚内間の都市間特急バスは夜行便を利用すれば、宿泊費の節約と旅程の短縮になる。利尻島内のほとんどの宿泊施設がフェリーターミナルと鴛泊コース登山口の北麓野営場までの送迎を行っている。沓形コースを登る場合は、見返台園地までの送迎を行っている宿を選びたい。

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交通機関情報
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新千歳空港ー札幌間
最速36分 1040円 1日50便以上
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特急わっかない号特急はまなす号 (宗谷バス・銀嶺バス共同運行)
札幌大通バスセンターー稚内フェリーターミナル間 (札幌⇄稚内) 
5時間50分 (夜行便6時間30分) 片道 6000円 往復 11000円 回数券4枚綴り 20000円
1日6往復 完全予約制
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JR特急スーパー宗谷・特急サロベツ (JR北海道)
札幌ー稚内間 (札幌⇄稚内)
4時間59分〜5時間41分 9660円 1日3往復
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稚内ー利尻島鴛泊間           稚内ー礼文島香深間
1時間40分 2等 2180円 1日4往復        1時間55分 2等 2400円 1日3往復
稚内ー礼文島香深間           利尻島鴛泊ー礼文島香深間
1時間55分 2等 2400円 1日3往復          40分 2等 880円 1日2往復
利尻島沓形ー礼文島香深間
40分 2等880円 1日2往復         (5/1〜9/30の繁忙期間の便) 
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利尻島内路線バス (宗谷バス)
鴛泊フェリーターミナルー沓形間 (沓形→鴛泊→沓形)
最速32分 730円 1日5〜6便
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利尻島内タクシー・レンタカー情報ほか
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※このモデルルートはおすすめルートであり、一般的には鴛泊コースを往復する登山者が多い。よって「沓形コース→ 鴛泊コース」というルート案内ではなく、2つのコースに分けて案内する。

沓形コースガイド

沓形の街から登山口である見返台園地までは車で約20分、徒歩では1時間半ほどかかる。登山前夜は登山口まで送迎を行っている宿に宿泊することをおすすめする。このコースは鴛泊コースよりも距離は短いが、勾配はきつく急坂も多い。途中、崩壊地のガレ場や残雪(初夏まで)のトラバースがあるので初級者は経験者との同行を必要とする。下山は鴛泊コースをとる登山者が多い。


見返台園地駐車場の道路沿いにある登山口より鬱蒼とした針葉樹林の中へ入る。トドマツやエゾマツ、ダケカンバの混交樹林帯をすすんでいくと、五葉の坂あたりからは樹林の間に沓形港が見えてくる。眼下の景色を探しつつハイマツ帯となった道をすすむと高台に避難小屋がある。小屋裏にはトイレブースが設置されている。礼文島を一望できる礼文岩を過ごし、狛犬の坂、夜明しの坂という急坂を登り、視界の開けたハイマツ帯、8合目馬の背の稜線を歩く。さらにボタンキンバイやハクサンイチゲ、イワギキョウなどが群生している急斜面を登りつめると三眺の宮社がたつ三眺山の頂上に出る。利尻山山頂付近の荒々しい西壁や南稜が印象的である。背負子投げの難所と呼ばれる岩場をいったん下り、狭い稜線を歩き、親不知子不知の火山礫の斜面をトラバースする。ここは落石や滑落、転倒による事故も発生している難所で、6月〜7月初旬の残雪期にはアイゼンやピッケルが必要な場合もある。その後も足場の悪い岩場や火山礫の道をすすむが、やがて鴛泊からのルートと合流する沓形分岐に出る。その先山頂付近の登山道は崩壊と修復を繰り返し、ロープを張られた箇所も多く、足元に注意したい。頂上直下の岩場からは聳立するローソク岩が見え、砂礫の急斜面を登りつめた先が利尻山北峰となっている。頂上は双耳になっており、南峰が最高峰だが南峰へのルートは崩落が激しいので立ち入り禁止となっている。北峰には山頂神社が鎮座しここを山頂としている。




鴛泊コースガイド

稚内からのフェリー便はすべて鴛泊発着なので、一般的でポピュラーなコース。山頂までの距離が沓形コースより長いが、勾配が比較的緩やかで登りやすい。登山者のほとんどがこのコースを往復する。登山口のある北麓野営場までは鴛泊フェリーターミナルより約4kmで、徒歩約1時間、車で約10分の距離。島のほとんどの宿泊施設がこの登山口への送迎を行っている(要確認)。

利尻北麓野営場(3合目)から遊歩道を歩きだすとまもなく、日本名水百選に選ばれた甘露泉水が現れる。ここは利尻山中唯一の水場である。甘露泉水よりはポン山への分岐を分け、4合目針葉樹林帯の野鳥の森をぬけると、5合目あたりからはやや急坂のミヤマハンノキとダケカンバの樹林帯となる。樹林帯をぬけると6合目の第1見晴台で、礼文島や鴛泊市街が眼下に見える。ここからはハイマツ帯の尾根道となり、つづら折りの急登を繰り返す。7合目七曲、第2見晴台を過ぎれば、8合目長官山の頂上が見えてくる。長官山山頂からは利尻山の雄姿が眼前に迫る。長官山と利尻山の鞍部にある避難小屋まではやや緩やかな尾根道を行く。避難小屋からは再びきつい登りとなるが、リシリヒナゲシ、ボタンキンバイ、ハクサンイチゲなどの高山植物帯を観賞しながら歩をすすめることができる。9合目からは沓形からの合流点沓形分岐までは、傾斜の増したガレ場や滑りやすい火山礫の道となる。分岐から山頂付近の登山道は崩壊と修復を繰り返し、ロープを張られた箇所も多く、足元に注意したい。頂上直下の岩場からは聳立するローソク岩が見え、砂礫の急斜面を登りつめた先が利尻山北峰となっている。頂上は双耳になっており、南峰が最高峰だが南峰へのルートは崩落が激しいので立ち入り禁止となっている。北峰には山頂神社が鎮座しここを山頂としている。














※利尻山のトイレルール

登山口である利尻北麓野営場と見返台園地以外の登山コース上にはトイレはない。携帯トイレ(400円)の持参がルールとなってる。
携帯トイレ販売所 島内の各宿泊施設・コンビニ・観光案内所・キャンプ場など
携帯トイレブース 鴛泊コース 6・8・9合目、沓形コース 6合目、7〜8合目の間
携帯トイレ回収ボックス設置場所 利尻北麓野営場と見返台園地

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利尻島お役立ち情報サイト
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利尻島参考宿泊施設
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民宿えびす荘 (沓形地区)
利尻ふれあい温泉まで徒歩5分 沓形コース登山口までの送迎あり (片道一人1000円)
島の宿としては安い
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利尻山荘花りしり (鴛泊地区)
鴛泊フェリーターミナルより徒歩15分 利尻富士温泉まで徒歩5分 フェリーターミナル・登山口までの送迎あり
島の宿としては安い
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利尻北麓野営場 (鴛泊コース登山口)
鴛泊フェリーターミナルより徒歩1時間
テントサイト 500円 ケビン 5000円 (4人用・要予約)
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利尻島温泉情報
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沓形フェリーターミナルより徒歩5分
13:00〜21:00 (最終受付20:30) 年中無休 550円
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鴛泊フェリーターミナルより徒歩10分
11:00〜21:30 (6〜8月) 12:00〜21:00 (9〜10月) 年中無休 500円 コインランドリーあり
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セット登山の提案
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利尻山に登り、礼文島を歩く

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